水のはなし

昨年8月にここに来てから早くも10ヶ月が流れた。季節も去年赴任したばかりの頃の暑さになり、最近では職場の冷房の前に立ち、冷たい風の存在に感謝しつつ、「きた頃もこんな感じだったなー」と思ったりする。

不思議なもので、どんな外国でもある程度長くいると、外国にいるという感覚がなくなる。未だに現地語は大して話せず、街を知り尽くしているわけでもないのに、「慣れ」という人間の環境適応能力の賜物なのか。 職場も住居も首都ドゥシャンベの中心部にあり、舗装され緑の多い通りを歩いたり、大通りを走る高級車や奇麗な服を着た若者達を見ていると、この国が途上国ということも忘れがちになってしまう。

しかし、出張で舗装されていない道を長時間走り、ヒビだらけの壁と土床の教室で勉強する生徒や、雨漏れのある建物で20、30年前の医療器具を使っている病院、風化しかけた灌漑用水路を何度となく見ると、間違いなく途上国であると改めて認識させられる。

今回はタジキスタンの水資源について、素人の自分に説明出来る限り掘り下げた話しにしようと思う。
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タジキスタンが国として持つ一番大きな力は「水」。標高7000以上の最高峰をはじめとする山々が、冬の間に雪または氷として大量の水を蓄え、その水は止まる事無く川へ流れ続ける。といっても場所・季節によっては川が枯渇したり、地理的に水が十分でない地域も当然ながら数多く存在する。

水はどの国にとっても、どの生き物にとっても生きる上で欠かせないものだが、この国においてはその重要度は計り知れない。水は農作物をつくる。地球上の多くの場所でそうであるように、タジキスタンでも農業が人々の暮らしを支えている。特に地方においては農業が雇用の殆どを占め、人々の収入もまた同様である。

水以外の天然資源による恩恵が皆無に近いこの国では、この豊富な水を最大限に利用する。タジキスタン国内のダムによる発電量は世界トップクラスであり、堤高(高さ)だけで言うと世界で1位(建設中のログンダム:335m)、2位(ヌレクダム:300m)のダムがタジキスタンにある。だが、これらのダムは下流に位置するウズベキスタン等の近隣国へ多大な経済的影響を与えるため、タジキスタンのダム建設を避難する国も多い。(エチオピアのナイル源流「ブルーナイル」にあるダムがエジプトに避難されているのと同様)

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しかし現在も水力発電量は十分ではなく、マイナス10〜20℃を下回る寒さにより水量が減る冬期は慢性的な停電となり、首都でも中心部を除き一日に数時間しか電力供給が得られない。また、タジキスタンでは膨大な電力を必要とするアルミニウム精錬(原料のポーキサイトは輸入に依存)が主な産業であり、国の輸出額の半分以上がアルミニウムによるものである。さらに、得られた電力はアフガニスタンにも売られ、今後のアフガニスタンの安定と経済成長への原動力ともなる。様々な経済的・政治的要素が絡み合い、タジキスタンにとってダムの建設は死活問題であり最重要課題であり続ける。

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ヌレク湖(写真:ネットより引用)

自分は地理学者でも水資源専門家でもないが、もしあの山々が無ければ川にも安定した水が流れず、水力発電や灌漑用水どころか飲料水や生活水もままならず、はたして人はここに住み着いただろうかと思う。

今日も冷房の効いたオフィスで仕事が出来るのは、この瞬間も山奥から流れ続ける水のおかげ。

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電気を大切にね!
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by hoop29 | 2014-11-10 03:56 | タジキスタン