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2008 4月 中央アルプス 

千畳敷カール - 木曽駒 - 宝剣 - 空木  3泊4日

朝、家を出てから5時間以上をかけて、電車、バス、ロープウェイを乗り継ぎ千畳敷カールへ到着。もう昼もすぎていて、気温も暖かい。 観光客に混じりロープウェイを降りて外へでるとまばゆい光と一面に広がる白と黒だけの世界に心が弾む。 カールの途中に降りてくる、または登っていくスキーヤーと登山者がちいさな粒のようにポツポツと見える。
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斜面は足跡がずっとついているが、すでに気温が上がっているためトレースの上をあるくと、さらにすねくらいまで沈んでしまう。 歩いてみると遠くで見るよりなだらかなのがわかる。
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カールをのぼりきると宝剣岳と雪にうもれた小屋がみえてくる。
日帰りの登山者に宝剣岳をバックに写真を撮ってもらった。

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下の写真は木曽駒ヶ岳の山頂の祠。  その下は宝剣小屋付近に張ったテント。
この先は人に会う事はなかった。
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夜もそれほど冷え込まなかった。 月明かりの明るさで雪の上に小屋の陰がはっきりと見える。
翌朝は起きるのが遅れた上に、アクシデントというか、またドジをやらかしてしまった。
テントをたたむためポールを抜いていた時だった。片方をぬきおわり、もう片方も抜いてたたみ、最初に抜いたほうもたたもうと思うとなぜか見当たらない。 突然きえてしまった。 しばらくまわりをうろうろして探す。 
そこである事に気づく。   テントを張った場所はわずかに谷に向かって斜度があった。そして考えたくなかったがそれしかポールがつれてゆかれた所はない。 谷に降りていくと視界には白い斜面だけだ。相当おりないとだめかも。 しかしポールなしではこの先話にならない。意を決してシリセードで下る。
かなり下ったところで斜度が平坦になったところにわずかに生えている雪から出たブッシュにひっかかっていた。 このブッシュがなければさらに下まで爽快にすべっていただろう。 とにかくポールを手に取り上にもどるが、朝っぱらから1時間と体力を無駄にした。

宝剣岳の登りはキックステップされたトレースがのこっており、それにそって山頂へ向かう。
急斜面のトラバースはかなり怖かった。すべったら途中で止まりそうも無い。 確実にステップを蹴り込んでゆく。 山頂からは千畳敷カールが一望でき天気もよく南アルプスもみえる。   極楽平の方への下りは氷と雪のついた岩場を降りるが、ここも緊張がつづく所だった。

宝剣を下りきると平坦な稜線へでる。 
ここからしばらくは歩きやすい道がつづき気分もいい。しかしトレースはこの先なくなる。
これから歩く稜線の全豹がみえる。 まだ空木岳は遠くにみえる。

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午後からは雲が増えてくる。
たぶんこれが槍尾岳だ。  ここから尾根が東にのびていて避難小屋がみえる。
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ここらかみる空木岳の南斜面は垂直壁に見え、明日はあの頂上にいるんだと思うと恐怖もましてくる。
稜線歩きの後半はかなりアップダウンも大きくなり熊沢岳の登りは雪もところどころもろくなって速度も落ち疲労がたまりはじめた。
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午後2時くらいから雪がちらちらと降り始め空は雲に覆われて暗くなり嫌な雰囲気になってしまった。  東岳のあたりでは膝から股までもぐり、疲れとイライラがたまり天候もよくなく気持ちが焦りだす。 それまでも何度か雪屁ぎりぎりを歩いたりしていたが、ついつい雪屁側が歩きやすく寄ってしまう。  そしてついにやってしまった。
雪の上にカモシカの足跡がありなんとなくそれにそって歩いていたら「ばすっ」と音が聞こえ、一瞬後には体が浮いたように地面の雪がずどんっ と落ちた。  
瞬時に思ったのは、「やっちまった」 というのと「家族や知り合いにすまない」という思いと「ピッケルを斜面に打ち込まないと」ということだった。    なんとも幸運だったことに、5メートルほど垂直に崩れた雪屁は斜面でとまり、自分も股まで埋まり、ピッケルで軽く胸を打撲しただけですんだ。  恐怖をごまかすために「あぶねーーー」と一人で声をださずにはいられなかった。 斜面を這い上がり稜線へもどる。そこから先は一歩一歩びくびくしながら、へっぴりごしで木曽殿山荘まで下った。
期待していた避難小屋は雪で完全に埋もれており、30分ほどシャベルで入り口を掘り出したものの小屋の中も雪が半分くらい入っており、あきらめて外にテントを張る。 
この日の夜は風もあり積雪もあり夜中もテントの中からテントに積もった雪をたたいて落としたりしながら眠る。

翌朝おきると、予想以上に雪が積もっており、すねから膝までのラッセルの登りのスタートとなる。 はじめの30分ですでに疲れてしまった。 それでも風のある稜線まで上がると雪もしまり、歩きやすくなる。 

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中腹まで登ったところですこし太陽が見えたので写真を撮った。
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後ろを振り向くと昨日通過した東川岳がある。 雪庇が崩れて落ちたあたりも見えた。
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この先は難所の連続だった。  第1ピーク、第2ピークは登山道のマークも全くみつからず、行けると思ったところをトラバースや登攀並みのアクロバットで越えていった。一カ所、20メートルくらいの両側が切れ落ちた雪のナイフリッジを一歩一歩慎重に歩く。 
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岩場では何度かいきづまり相当時間を費やしたし、緊張感で疲れきってしまった。 山頂に着いても、ただ早く安全な所に行きたいと思うだけで、そのまま歩き続けた。

ここで、また失敗をする。  そもそもこの旅にコンパスを忘れてしまった事が致命的だった。山をやる人間として失格だ。
空木の山頂で方角も確認せずに尾根を下りはじめて、40分くらいしてから下りの稜線の地形が遠くでみたのと違うことにようやく気づいた。  そして1時間かけて山頂までもどる。正しい尾根は雪屁にしか見えないような雪の盛り上がった向こうにあった。 ここで既に昼すぎで、下の小屋につくのは難しくなってきた。 ロスした時間を埋めるために、そこからはひたすら下る。しかしこの下りの稜線の雪もくさっており、ワカンを持ってこなかったことを後悔するしかなかった。

森林地帯にはいると、地形が入り組んでおり、地図には迷いに注意と出ている。 そして自分はどっちを向いているのか分からないまま進み続けた。一歩一歩、ももまでもぐる雪の中をじりじりすすむ。途中まではたまに赤いテープをみかけたが、ついに道を失う。 時間は5時をすぎている。疲れと焦りで、もう戻る気力はない。  地図をみると、このまま下り続ければ、どこかの沢にでれそうだと思い道亡き道をくだっていく。 体も土まみれになりもうどうにでもなれと思っていると、細い雪渓にでる。ここからはピッケルを雪に打ち、グリセードで体ごと滑らせていく。もう7時ちかくになり周りは暗い。とにかくテントを張りたいのだが雪渓の両側は斜面だけでなかなかみつからない。 しょうがなく傾斜のゆるい側の斜面をのぼり、かろうじてテントの四隅のうち3つがのる斜面があり、雪と石の斜面をピッケルで削りテントに潜り込む。朝出発してから14時間経っていた。衣類はすべてびしょぬれだったが寒くはなかった。
幸い電波があったので次の日に出社できないと会社に電話し、家族にも電話する。 体と荷物は全て平になっている側へよせてテントを安定させながら寝袋に入る。 いつ斜面からテントごと滑り落ちるかびくびくしながら眠った。
翌朝、太陽の方角と地形からようやく、おそらくの自分の位置と自分が降りるべき沢がわかる。荒井沢の上流だ。 一カ所、落差8メートルぐらいの垂直の滝があり、ここを高捲きするのに30分を要した。
そこから先はデブリや枝、石のちらばる雪渓をひたすら下る。 2時間ほどで雪もへり、沢らしくなってきた。 足場の悪い所で一発派手にころんですねを強打ししばらく悶絶。 
さらに一時間で地図にある通り、別の沢との合流地点に着き自分の予想どおりの沢にいたことを確信し安心する。   そこから先には小さな堤防があり、ここも高捲きで越えると、遠くに工事場の車がみえた。人はいないが、とにかく山から抜けた事で喜びが込み上げてきた。  両手を突き上げる。 どの山頂についた時よりもうれしかった。 

そこから30分あるき車が来れる林道まで出てタクシーを呼ぶ。 
どこの林道がはっきりわからずタクシーから、居場所がわからないので引き返すと電話がくる。
あきらめて、あるきはじめ数分後、林道の分岐点の様な所を通りかかると車の音が。  まっているとタクシーが見えてくる。   
もしタクシーに遭えなければ町まで2時間かかったはずだった。   とにかくドライバーに礼を述べ温泉のある所まで送ってもらう。
ここの温泉で飲んだ地ビールはうまかった。 南信州ビールね。 
あたたかい日差しがさしておりバスを待っている間はぬれた靴や衣類を乾かした。 この3日間歩いた山が遠くに見える。
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by hoop29 | 2008-04-18 18:50 | 2008