2008 夏 北海道記 知床ウトロ 山編 7/27-7/30

2008 7月27日
いよいよ自分の一握りに満たない経済力とかたよった情報収集能力と中途半端な体力を懸け、オリンピック開催並みの気合いで、まだ生まれてこのかた踏み入ったことのない北海道の大自然に身を委ねる旅がはじまる。

10日から12日間の行程は知床の岩尾別温泉の登山口から始まる。羅臼岳に登り、そこから尾根上をひたすら岬に向かい歩く予定だ。  本でも、ネットで調べた情報でもわかっていたように、この尾根は登山道はなく、ほとんどハイ松の薮こぎというものだ。 自分はちょっとだけハイ松の薮こぎを北アルプスで道に迷ったときにやったが10メートルすすむのに5分かかる。おまけに体は松ヤニでべとべとし、枝で顔がひっかかれ、ぎっしりと生えた松は足が地面に着く事を許さない。 行程の途中はわずかにしか水場がない。    
とにかく不安要素たっぷり、重たい水もたっぷりもって突っ込む勇気が必要だ。

出発時の東京は暑かった。 羽田から直行便で女満別空港に降り立つ。飛行機を出た瞬間すずしさを感じられる。 一番安い残り物の便だったので到着は6時くらいだった。 網走行きのバスはもう無いのでタクシーに乗り西女満別駅でおろしてもらう。 無人で雑草が大きな顔して繁栄する秘境の駅だった。 待ち合い用の小屋に自由ノートがあり、これからの幸運を祈り書き込みをする。 
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日も暮れ暗くなった頃、ようやく電車がくる。そこからは2時間くらいかけて知床斜里に着く。夜なので景色は見れない。 この駅周辺のキャンプサイトは時間が遅いためもう閉まってしまうとわかっていたので予約しておいた民宿に止まる。 朝はイクラまでついていて量もたくさんあり満足。 駅から出る知床ウトロ行きのバスに大きなザックと期待と共に乗り込む。 
天気は快晴。初めてみる北海道の景色や道に感動。顔のニタニタがもどらない。  
知床のウトロの自然センターに着き、係の人に登山道の情報をきく。 海岸ルートの危険箇所が書き込んであるファイルをみせてもらい、写真に撮る。 カメラの液晶スクリーンで拡大して見れば文字まではっきり読めるのだ。
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事前に確認しておいたガスカートリッジもここで購入。 (ガスや火器等は持ち込み禁止、または規制があり飛行機に乗せられない。 帰りの便でも、あまったガスカートリッジは空港の荷物チェックの所でもったいないが処分してもらった。 )
ベアーアタック対策に、カラン コロン と軽快な音をだすベルと、思いっきり吹くと、ほんとにやかましいホイッスルもここで装備に仲間入り。 バスがくるまでセンターにある本など目を通しているとセンターの人の勧めで羅臼の小学生の冒険クラブが毎年行う岬までの海岸ルートトレッキングの絵本があるというので見せてもらった。 海岸ルートは所々、海水に浸からなくては通れない場所もあるので小学生でも通れるとわかり少し安堵した。

自然センターに寄ったため登山口直行の午前最後のバスにのれず、途中までしか行かないバスにのる。 そのバスをおり3kmほど舗装された林道をあるいていくと登山口につく。 この林道で早くもエゾシカが侵入者のチェックに来た。

登山口の木下小屋の主人に水場や道の事等を聞きいた後いよいよ登り開始。 
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羅臼までは普通の道が続き、一般の登山者、外人の観光客と何度もすれ違う。 太陽は暑いが、陰に入りじっとしているとすぐに体の熱は引くので心地いい。
小屋で聞いたとおり弥三吉水という水場は水があり、ここで2リットルほどタンクにいれる。
この水場で一息いれていると、朝早く登った人がすでに下山してきていた。
この上にある銀冷水という水場は涸れていた。  この先は大沢という開けた所にでる。 ロープと杭でルートからそれないようになっている。    ここでまた地元の生き物とすれ違った。
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この辺りは急な登りになるが、もう一息で羅臼平だ。     しかし左膝にかすかな痛みを感じはじめた。

羅臼平につき荷物をおろし、食べ物はフードロッカーへ。(この辺りのキャンプ指定地にはクマ対策のため設置してある)   カメラと水だけ持ち山頂へ向かう。
これは山頂まで15分くらいのところで撮ったもの。
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途中で単独の人に2人であい、そのうちの一人のおじさんを世間話をする。
山頂から見る内陸側。 稜線を隔ててウトロ側(右)は晴れ。羅臼側(左)は雲の下だ。
これから3日ほど、こんな天候が続く。 オホーツク側と太平洋側で気候が違うのだ。
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これは山頂から撮った、明日向かう予定の硫黄岳方面。 まだまだ遠い。
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羅臼平から山頂へ向かう途中にある岩清水とよばれる所。 
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この辺りでは唯一の水場だ。みずは雪から溶け出したばかりのごとく冷たい。 コケと岩から垂れ続ける水をチョロチョロとプラティパスに5分以上かけて入れる。 どうしても周りの水がはね手が濡れてかじむほどだった。
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山頂を往復してくる間に膝の痛みがはっきりとした痛みに変わり最後の方ではまともに膝を曲げれずになってしまう。  この左膝は数週間前ジョギングをハードにしすぎた日の後にバスケットをして一度、痛めた膝だった。  数週間安静にしていたため眠っていたようだが、ここで再発してしまったようだ。

とにかく羅臼平でテントを張り、クマを気にしながらご飯をたべ寝る。 この日は近くに一人テント泊の人がいただけだった。   膝の痛みの不安、そして計画した行程をこんなに早く諦めなければいけなくなるかもという失望感に包まれた夜だった。

2日目
朝方トイレのため外にでると痛みは引いてはいなかった。 この時は本当に憂鬱だった。 とにかく硫黄山まででも行ってみようと歩き出す。  やはり、痛みでスピードが落ちてしまう。こんなスピードでは水に制限がある数日にわたる薮こぎを突破できないのは目に見えている。
下り道は最悪だった。 脳がもう歩くなと言ってくる。 できるだけ右足だけを使った歩きにする。
羅臼平から硫黄岳方面に向かう人はほとんどいない。ここから先が知床らしい山容だと思う。昨日、羅臼山頂付近で出会った人は、羅臼平の少しさきにある三ツ峰にテントをはっていた。もう硫黄にむかって出発してしまったようだ。 ちなみにここの水場はかれている。
これはサシルイ岳から、羅臼岳をふりかえったもの。 この地形と緑色は北海道特有だ。 
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ここから先に下って行くと残雪の雪渓がありここで水を補給。 解けたての水だから大丈夫と思い水はそのまま飲んでしまったがおいしかった。
(普通であればキツネなどから発生するエキノコックスという危険な寄生虫を殺すため煮沸してから飲まなければいけない。)
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この日は休憩も多くとりながらあるいた。途中オッカバケで、早朝に岩尾別から登ってきた人に出会う。いろいろ話していると、自分が今回参考として読んだ網走山岳会の伊藤さんという方が書いた本も本人の事も知っているそうだ。 他にも色々話しをする。その人は日帰りで岩尾別に帰える予定だったが硫黄山のほうから降りてみるといって先に行った。
まだ硫黄岳の下山口まではかなりの行程が残っていて、その人が明るいうちに着けるか心配だった。
自分はその後ものろのろ歩き二ツ池という場所でテントを張ることにした。
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ここで前日、羅臼で会った単独の人(三ツ峰にテントを張ってある人)が硫黄山を往復して帰ってきた。話をきくと相当道がわるいらしい。とくに硫黄山付近が。浮き石ばかりで危険だから膝が悪いなら辞めた方がいいよと言われた。 

まだ午後1時だったので2時間ほど池の周りを散策した。 ここはとにかく小さい虫が無数にとびかい鬱陶しかったが、あまりにも多いので途中から無視することにした。  ラーメンを調理している時とテントを張っている間にあっというまに20カ所ぐらい蚊にさされ大変な思いをした。
ここでは池の水を飲み水とするが、さすがに虫が浮いているし動物も水場として使っていそうなので出来るだけきれいな所で水を汲み、すべて煮沸する。 テントに入っても日が辺り暑くてじっとしていられない。しょうがないのでまた外をうろうろすることにする。
といっても池以外なにも無いので池の中を観察したりするだけだった。
ここで思わぬ生き物を見つけた。 水のなかを注意深くみていると偶然なにか動くものが目に入った。 さらに目をこらし続けると小魚みたいのがいる。 4cmぐらいだったかな。でもへんてこな形だ。そしてようやく気付いた。 サンショウウオの幼生だ。  このもっと先にある大きな沼にはサンショウウオが生息すると本で読んだ。 しかしこんな上の稜線上にある池にいるとは。後でウトロのパークレンジャーの方に聞いた話だが、今年は雪解けが早く水温が高かったため普段孵化しないサンショウウオの卵が孵化したんだろうとうことだ。

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池の近くの道。
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この日の夜はかゆさと戦いながら、たまにホイッスルを鳴らしたりして寝た。 夜は蚊の大群も消えていたのでテントから上半身だけだして、夜空にちりばめられた光の粒を見上げ好きなピアノの曲を聞きながらぼーとしていた。    今日のコースのデザートかな。

3日目  8/30
前夜テントの中で迷いに迷って、いろいろな可能性を考えた結果、今日下山することを決めた。  これは大きな声では言えないのだが、実はこの先進む硫黄山の下山ルートは現在通行止めなのだ。 しかし硫黄山までいって、またアップダウンを繰り返し来た道をもどるのは嫌だった。 昨日、途中で先にいったおじさんも硫黄山のほうから下山したはずだし、なんとかなるだろうと思い強行する。 

まずは南岳への登りだ。この道はとにかくハイ松が濃く登山道も狭いため、足下が見えないくらい枝や葉が上半身をたたく。 顔には何度もクモの巣がかかり、とにかく我慢の登りだった。
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南岳を過ぎて知円別岳がちがづくと登山道は開けて歩きやすくなる。しかし所々道がわかりにくいので注意が必要。 その先はお花畑もあり、平和な感じの所がつづく。

知円別岳の分岐点からはいきなり危険な浮き石だらけの斜面をトラバースする。 
写真はそのトラバースのスタート地点で向こうに白くみえるのが進むべき稜線だ。
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はじめはこのトラバースは登山道じゃないだろうと思い高捲きしようとしたら、さらに危なくなったので引き返した。 ここは水平になるべく安定した岩や石をふみながら通過する。なんども人が通るうちにできた、それらしきトレースみたいのがあるのが近くにいくとわかるはずだ。 そしてこれが白い稜線にでてから振り返って撮ったもの。
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白い石でできた稜線にでてそこからはアップダウンが続く。 この先にはへんてこな形をした奇岩がある。 この岩の真下を通り抜ける。
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さらに進むと硫黄山手前の小ピークに出るが、そこから硫黄山にむかうルートを見失ってしまう。 ややこしい事にバツ印がついた岩の向こうに降りれそうな箇所があり、そこを東に下って行くと道らしい道(ハイ松が濃く、とおくからでは見えない)になり、東にある小さなピークとの鞍部にでるので、ここから北に折れてガレ石を下る。 すぐに硫黄山山頂を指す標識が見えてくる。しかしどこから登り始めればいいのかはっきり分からなかったので荷物を置きとりあえず上を目指して登った。

見た目よりも山頂は上で、結構時間がかかった。30分くらいか。  しかし山頂の展望はすばらしい。岬までは見えないが360度みわたせる。 登ってよかった。 
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山頂から羅臼岳側をふりかえる。
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この先にあるのはまだ見ぬ岬。 本来であればこの先の濃い緑の尾根を行くはずだった。
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山頂から下山道への分岐点を確認しようとするが分からなかった。  左膝をかばいながらゆっくり降りるとペンキの印がついた登山道があった。登りも、ここから登ってれば少しは楽だったな。  荷物まで戻り地図をたよりに下山道への分岐点へ向かう。 さっきの正規の登山道はまた登り返さなければならないので、なんとか登らずに地図にある下山道へでれないかとおもい、岩場をトラバースする。 しかしこの岩場の岩はもろく、つかむとボロボロくづれ、踏み込むと岩がゴロゴロ斜面を落ちて行く危ないところだった。なんとか通過するがよけいに体力と時間がかかってしまった。ここは上の道を行くべきだった。  いそがばまわれってね。 

分岐点はすぐに分かった。 がコンパスや地形をみて念を押す。 後は下りだけだと安心するが安心するにはまだ早かった。
膝はそれほど悪くない。 しかしここの長い下りは本当に長かった。左膝を気遣いながらだから別の所に負担がでて疲れ安くなるからそう感じたのかも。  地図上のという箇所の30分ほど手前は、土砂崩れがあったらしく、残雪のかたまりが茶色く砂をかぶっていた。  それでも、その雪からチョロチョロ解ける水は澄んでいて冷たくおいしかった。
直接四つん這いになり、水をすすっている所。
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沢出会は地図にあるとおり迷いやすいと書いてあるとおり実際分かりづらかった。
そこまでは涸れた沢道をまっすぐ下ってきたが、この沢出会では左に折れて薮の中をすこし登り登山道になる。そこからは、ひたすら草や木が濃い所をじりじり高度を下げていく。途中でクマの糞をみつけ、しばらく緊張した状態で声をあげたり手をたたいたりしながら下った。新噴火口という地点に出ると視界がひらけペイントされた登山道のマークが見られるようになる。
そのあたりから歩きやすくなり最後の30分くらいは緩やかな下りのととのった林道をどんどんくだっていき、突然道路にでる。 太陽は西の空に低く落ちてきていて眩しかった。そこからカムイワッカのバス停までは10分くらいで着いた。   バス停につくと観光客の人が数人とパークレンジャーの人がいて、案の定通行禁止の登山道を降りてきた事に注意をうけ、自分の歩いた行程を説明した。  こうやって標識や注意を無視して通行禁止のところに入る人が後を絶たないことやそれが引き起こす問題をきかされ恐縮するだけだった。 それでもそれ以上の追及はせずに、山や自然の話等親切にしてくれた。 昨日オッカバケで出会い下山していったおじさんの事はレンジャーの人がも知っていた。昨日の夕方4時にはこのバス停に着いたようだ。私と同じく注意をしたそうだ。 でも軽装だったとは言え、一日で岩尾別からカムイワッカまで歩き通すとは、かなりの早歩きで降りたんだろう。

ちなにみ、あと15分バス停に着くのが遅かったらクマにおびえながら(この辺りはクマの出没が多い)  一晩すごすか、4時間以上かけて暗闇のなかを歩いて町まで帰るところだった。

この日はカムイワッカの最終バスでウトロにもどり民宿知床で体勢を立て直す。 風呂場のボディーシャンプーで洗濯をし部屋に干す。夕飯はすでにおそくて宿の方で用意できなかったので近所のスナックのようなところで食べた。 ボリュームたっぷりのほっけ定食とつぶ貝のバター焼きにビール。  what else can you ask for? u have no idea how nicely they filled my stomach that night.  

翌日は羅臼と海岸へ。
つづく。
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by hoop29 | 2008-08-26 00:56 | 北海道